大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

札幌地方裁判所 昭和46年(ワ)3027号 判決 1973年1月31日

原告

白木チル子

ほか一名

被告

高橋太作

ほか一名

主文

一  被告高橋太作は、原告白木チル子に対し金二、七四三、五〇〇円および内金二、六四三、五〇〇円に対する昭和四六年三月一九日から完済まで年五分の割合による金員を、原告白木ヨシに対し金二、二四三、五〇〇円および内金二、一四三、五〇〇円に対する昭和四六年三月一九日から完済まで年五分の割合による金員を、それぞれ支払え。

二  被告佐々木昭は、原告白木チル子に対し金二、七六五、〇〇〇円および内金二、六六五、〇〇〇円に対する昭和四六年三月九日から完済まで年五分の割合による金員を、原告白木ヨシに対し金二、二六五、〇〇〇円および内金二、一六五、〇〇〇円に対する昭和四六年三月九日から完済まで年五分の割合による金員を、それぞれ支払え。

三  原告らのその余の請求を棄却する。

四  訴訟費用はこれを三分し、その一を原告らの負担とし、その余を被告らの負担とする。

事実

第一請求の趣旨

一  被告らは各自、原告白木チル子に対し金三、八五〇、〇〇〇円および内金三、五〇〇、〇〇〇円に対する被告佐々木昭は昭和四六年三月九日から、被告高橋太作は昭和四六年三月一九日から、完済まで年五分の割合による金員を、原告白木ヨシに対し金三、三〇〇、〇〇〇円および内金三、〇〇〇、〇〇〇円に対する被告佐々木昭は昭和四六年三月九日から、被告高橋太作は昭和四六年三月一九日から、完済まで年五分の割合による金員を、それぞれ支払え。

二  訴訟費用は被告らの負担とする。

との判決を求める。

第二請求の趣旨に対する答弁

一  原告らの請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告らの負担とする。

との判決を求める。

第三請求の原因

一  (事故の発生)

訴外白木二郎(以下「亡二郎」という。)は次の交通事故(以下「本件事故」という。)によつて死亡した。

1  発生日時 昭和四五年一〇月二九日午前八時ごろ

2  発生場所 勇払郡厚真字軽舞二九九番地先路上

3  加害車 普通貨物自動車(札一ま二四一〇号)

右運転者 被告佐々木昭(以下「被告佐々木」という。)

4  被害者 亡二郎(当時、前記場所で道路工事の作業従事中)

5  事故の態様 被告佐々木は加害車を運転して、厚真町方面から鶏川町方面に向け進行中、前記場所で道路工事作業に従事中の被害者に自車右側面を衝突させた。

6  結果 その結果、被害者は右肺損傷等の傷害を負い三九時間後死亡するに至つた。

二  (責任原因)

1  被告佐々木は加害車を所有し、これを自己のために運行の用に供していたものであるから、自賠法三条により後記損害を賠償すべき責任がある。

2  被告高橋太作(以下「被告高橋」という。)は土木建築の請負を業とするもので、被告佐々木を雇傭し、同人所有の加害車に「高橋事業所」の看板を掲げさせてその営業に従事させていたものであるから、自賠法三条により後記損害を賠償すべき責任がある。

三  (損害)

1  亡二郎の損害(逸失利益)

(亡二郎の年令) 本件事故当時満四六才(大正一三年一月四日生)

(同職業) 労務者(三陽建設株式会社勤務)

(同年収) 八八二、〇〇〇円(一年のうち冬期を除く九ケ月間を平均月収額八〇、〇〇〇円、冬期の三ケ月間は失業保険による給付額合計一六二、〇〇〇円)

(同生活費) 月平均一五、〇〇〇円

(同就労可能年数)向後一八年間(六四才まで)

(中間利息控除) 複式年別ホフマン計算法(係数は一二・六〇三二)

(逸失利益額) 八、八〇〇、〇〇〇円(一〇万円未満切捨)

算式(882,000-180,000)×12.6032=8,847,306

原告白木チル子(以下「原告チル子」という。)は亡二郎の妻として、また原告白木ヨシ(以下「原告ヨシ」という。)は亡二郎の母として、それぞれ二分の一の相続分を持つ共同相続人であるから、原告らは亡二郎の右損害賠償請求権を各二分の一(四、四〇〇、〇〇〇円)づつ相続により取得した。

2  原告らの損害(慰謝料)

亡二郎の死亡により原告らが被つた精神的損害を慰謝すべき額としては、原告チル子につき一、五〇〇、〇〇〇円、原告ヨシにつき一、〇〇〇、〇〇〇円とするのが相当である。

3  損害のてん補

原告らは自賠責保険金として各二、四〇〇、〇〇〇円づつ受領したから、その限度で損害がてん補された。

4  弁護士費用

原告らは本訴の提起進行を本件原告ら訴訟代理人に委任し、その報酬として原告チル子は三五〇、〇〇〇円を、原告ヨシは三〇〇、〇〇〇円をそれぞれ支払う旨約し、同額の損害を被つた。

四  (結論)

よつて、被告ら各自に対し、原告チル子は右合計金三、八五〇、〇〇〇円およびこれより弁護士費用を除いた金三、五〇〇、〇〇〇円について、被告佐々木につき亡二郎死亡の日の後である昭和四六年三月九日から、被告高橋につき同様に昭和四六年三月一九日から、完済まで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払を、原告ヨシは右合計金三、三〇〇、〇〇〇円およびこれより弁護士費用を除いた金三、〇〇〇、〇〇〇円について、被告佐々木につき同様に昭和四六年三月九日から、被告高橋につき同様に昭和四六年三月一九日から、完済までいずれも前記割合による遅延損害金の支払を、それぞれ求める。

第四請求の原因に対する答弁(特に限定しない限り被告ら共通)

一  請求原因第一項(事故の発生)の事実は認める。

二  同第二項(責任原因)の1の事実は認める(被告佐々木)。

同項2の事案中、被告高橋が土木建築の請負を業とするものであること、被告佐々木所有の加害車に「高橋事業所」の看板を掲げさせていたことはいずれも認めるが、その余の事実は否認する(被告高橋)。

三  同第三項(損害)中、原告らがその主張どおりの損害のてん補を受けたことは認めるが、その余の事実は不知であり、損害額の相当性を争う。

第五一部弁済の抗弁(被告高橋)

被告佐々木は本件事故に関して、原告らに対し合計四三、〇〇〇円を支払つた。

第六抗弁に対する答弁

認める。

第七証拠関係〔略〕

理由

一  請求原因第一項(事故の発生)および第二項の1(被告佐々木の責任原因)の事実は、すべて当事者間に争いがない。

二  そこで、被告高橋の運行供用者責任の有無について判断するに、原告らと被告高橋間において〔証拠略〕を総合すると、被告高橋は土木建築の請負を業とするもので(この点は当事者間に争いがない。)、「高橋事業所」という名称を使用し、砂利や砂の仲買および運搬をも行つているが、従業員としては二、三名しかおらず、きわめて小規模なものであること、被告佐々木は従前従事していた漁業をやめるにあたり、友人の佐々木辰雄やその使用者である被告高橋の勧めにより、砂利等の仲買、運搬を行うこととし、昭和四五年一〇月二七日、本件加害車を月賦購入したのであるが、その際被告高橋が連帯保証人となつたこと、また、被告佐々木は被告高橋の承諾のもとに被告高橋所有の車にしてあるのと同様に、加害車の両側面に「高橋事業所」と書き入れ(この点は当事者間に争いがない。)、昭和四五年一〇月二八日から加害車を使用して、佐々木辰雄の指示にもとづき、被告高橋の請負つた工事現場に砂利等を運搬していたもので、本件事故当時もまた被告高橋の工事現場に砂を運搬した帰りであつたこと、被告佐々木の運搬した砂利等は、あくまでも被告高橋の納入したものとして扱われ、その代金はいつたん被告高橋のもとに入金され、その後に被告高橋から被告佐々木に支払われるものであつたこと、がそれぞれ認められ、これを覆すに足る証拠はない。

以上の事実によれば、被告高橋は被告佐々木を自己の営業の一部に包括し、加害車を利用、支配していたものというべく、従つて、被告高橋も被告佐々木とならんで自賠法三条により、本件事故によつて生じた後記損害を賠償すべき責任がある。

三  本件事故によつて、亡二郎および原告らが被つた損害は次のとおりである。

1  亡二郎の損害(逸失利益)と原告らの相続

(亡二郎の年令) 本件事故当時満四六才〔証拠略〕

(同職業) 労務者〔証拠略〕

(同平均年収) 八四六、〇〇〇円〔証拠略〕の結果四月から一二月までの稼働期間中、失業保険掛金を控除しても少くも毎月平均八〇、〇〇〇円を下らない収入を得、一月から三月までの冬期間は毎月四二、〇〇〇円(給付基本日額一、四〇〇円)の失業保険金を受給していたことを基礎に算出。)

(同生活費) 四〇パーセント

(同就労可能期間)向後一七年間(四六才~六三才)

(中間利息控除) 複式年別ホフマン計算法(係数は一二・〇七六九)

(現価) 六、一三〇、〇〇〇円(一、〇〇〇円未満切捨)

算式 846,000×0.6×12.0769=6,130,234

原告チル子は妻として、原告ヨシは母として、亡二郎の損害賠償請求権を各二分の一(三、〇六五、〇〇〇円)づつ相続により取得した。〔証拠略〕

2  原告らの損害(慰謝料) 三、五〇〇、〇〇〇円(原告チル子につき二、〇〇〇、〇〇〇円、原告ヨシにつき一、五〇〇、〇〇〇円)

3  損害のてん補(被告高橋につき)

四、八四三、〇〇〇円(原告ら各二、四二一、五〇〇円)

(同佐々木につき)

四、八〇〇、〇〇〇円(原告ら各二、四〇〇、〇〇〇円)

(一)  自賠責保険金 四、八〇〇、〇〇〇円(原告ら各二、四〇〇、〇〇〇円)

右は、当事者間に争いがない。

(二)  被告高橋主張の一部弁済四三、〇〇〇円(原告ら各二一、五〇〇円)

右は原告らと被告高橋との間で争いのないところである。

4 弁護士費用 二〇〇、〇〇〇円(原告ら各一〇〇、〇〇〇円)

四  よつて、被告高橋は、原告チル子に対し二、七四三、五〇〇円およびこれより弁護士費用を控除した二、六四三、五〇〇円に対する亡二郎死亡の日の後である昭和四六年三月一九日から完済まで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金を、原告ヨシに対し、二、二四三、五〇〇円およびこれより弁護士費用を控除した二、一四三、五〇〇円に対する前記起算日から完済まで前記割合による遅延損害金を、被告佐々木は、原告チル子に対し二、七六五、〇〇〇円およびこれより弁護士費用を控除した二、六六五、〇〇〇円に対する昭和四六年三月九日から完済まで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金を、原告ヨシに対し二、二六五、〇〇〇円およびこれより弁護士費用を控除した二、一六五、〇〇〇円に対する前記起算日から完済まで前記割合による遅延損害金を、それぞれ支払う義務があるから、その限度で原告らの本訴請求を認容し、その余の請求は理由がないからこれを棄却することとし訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条、七三条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 藤原昇治 前川鉄郎 佐藤久夫)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例